コラム

【公正証書遺言と自筆証書遺言の違い】

「遺言書の作成方法で人生が変わる?」

~公正証書遺言と自筆証書遺言、あなたに合うのはどっち?~

人生の終盤に向けて、自分の意思を明確に残す「遺言書」。
相続トラブルを防ぎ、家族の未来を守るためにも、遺言書の作成は非常に重要です。
しかし、いざ作ろうと思っても、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のどちらを選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを、実際の利用シーンを交えながら詳しく解説します。


■ 自筆証書遺言:手軽さと自由度が魅力、でも落とし穴も

特徴
自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きで作成する遺言書です。
2019年の法改正により、財産目録はパソコン作成や通帳コピーの添付も可能になりました。

メリット

  • 費用がほとんどかからない(紙とペンとハンコがあればOK)
  • 思い立ったときにすぐ書ける
  • 内容を誰にも知られずに作成できる

デメリット

  • 書式ミスや記載漏れで無効になるリスクが高い
  • 保管場所によっては紛失・改ざんの恐れがある
  • 相続開始後に家庭裁判所での検認が必要(ただし法務局保管制度を利用すれば不要)

こんな人におすすめ

  • 費用を抑えたい方
  • 内容を頻繁に書き直したい方
  • 法務局での保管制度を活用できる方

■ 公正証書遺言:確実性と安心感を重視するならこちら

特徴
公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述をもとに作成し、公証役場で原本を保管します。
証人2名の立ち会いが必要で、作成には一定の費用と手間がかかります。

メリット

  • 法的に最も確実な遺言形式
  • 書式ミスや無効リスクがほぼゼロ
  • 原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
  • 相続開始後の検認が不要

デメリット

  • 作成費用がかかる(相続財産の額に応じて数万円〜)
  • 公証役場に作成日の予約が必要(最大1か月程度先)
  • 証人2名の手配が必要(公証役場で用意してもらうこともできます)

こんな人におすすめ

  • 相続人間でのトラブルを確実に避けたい方
  • 高齢や認知症のリスクがある方
  • 特定の相続人に財産を集中させたいなど、複雑な内容を含む方

■ 実際のケースで考える:どちらを選ぶべき?

以下に、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらが適しているかを判断するための具体的なケース例を多数ご紹介します。年齢・家族構成・財産内容・目的などに応じて、どちらが望ましいかを整理しています。

ケース 状況 おすすめの遺言形式 理由
① 70代女性・子どもなし・甥に財産を残したい 法定相続人以外に遺贈したい 公正証書遺言 法的効力を確実にし、無効リスクを避けるため
② 50代男性・子ども2人・財産は預貯金中心 相続人間で争いの可能性が低い 自筆証書遺言(+法務局保管) 費用を抑えつつ、検認不要でスムーズ
③ 80代男性・認知症の兆候あり・不動産多数 判断能力に不安がある 公正証書遺言 公証人が意思能力を確認するため、後の無効主張を防げる
④ 60代女性・子ども3人・1人に多く残したい 不公平感からトラブルの懸念あり 公正証書遺言 内容の正当性を担保し、トラブルを予防
⑤ 40代独身男性・財産は少額・頻繁に書き直したい 柔軟に内容を変えたい 自筆証書遺言 手軽に何度でも書き直せる
⑥ 90代女性・施設入所中・家族と疎遠 遺言の存在を確実に残したい 公正証書遺言 公証役場で保管され、発見・執行が確実
⑦ 60代夫婦・お互いに全財産を残したい 夫婦間での相互遺贈 公正証書遺言(夫婦2通) 相互遺贈は形式ミスが起きやすく、公正証書が安心
⑧ 30代女性・未婚・ペットに財産を使ってほしい ペット信託や第三者への遺贈 公正証書遺言 特殊な内容は専門家の関与が不可欠
⑨ 50代男性・子どもなし・兄弟と不仲 相続人に知られずに遺言を残したい 自筆証書遺言(法務局保管) 内容を秘密にしつつ、検認不要で確実に残せる
⑩ 70代女性・子ども2人・1人は行方不明 相続手続きを簡素化したい 公正証書遺言 検認不要で、行方不明者がいても手続きが進めやすい

■ まとめ:遺言書は「書くこと」より「残すこと」が大切

遺言書は、書いた本人が亡くなった後に初めて効力を発揮します。
つまり、「確実に見つけてもらい」「確実に実行される」ことが最も重要です。

  • 手軽さを重視するなら自筆証書遺言
  • 確実性と安心感を求めるなら公正証書遺言

遺言書は、人生の集大成ともいえる大切なメッセージです。 しかし、せっかく書いた遺言書が「形式不備で無効」となったり、「見つからなかった」「改ざんされた」などの理由で、想いが届かないことも少なくありません。

そんな不安を解消するのが、公正証書遺言です。

費用や手間は多少かかりますが、それ以上に得られるのは「安心」と「確実性」。 大切な人たちに、迷いなく想いを届けるために、 遺言書は、公正証書で残すことをおすすめします。


「想いを“確実に”遺すために──遺言作成から執行まで、すべて弁護士が一貫サポート。」

ご自身の意思を正確に反映し、無用なトラブルを防ぐために。 経験豊富な弁護士が、遺言書の作成から保管、そして実際の遺言執行まで一貫して伴走します。

どちらの形式にしたらいいのか、どのように書けばいいのかなど、自筆証書遺言・公正証遺言を問わず、ご相談・ご依頼を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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