コラム

【遺留分の時効】

遺留分侵害額請求の時効とは?—請求漏れを防ぐために知っておきたい3つの期限

遺産相続において、一定の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されています。しかし、遺言や生前贈与によってこの遺留分が侵害された場合、相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使して不足分の金銭を請求することができます。

かつては「遺留分減殺請求権」と呼ばれていましたが、2019年の相続法改正により、金銭請求権として整理され、「遺留分侵害額請求権」となりました。

この請求には、時効や除斥期間といった期限が存在し、これを過ぎると権利が消滅してしまいます。今回は、遺留分侵害額請求に関する3つの重要な期限について、わかりやすく解説します。


1. 【1年の時効】遺留分侵害を知った時からのカウント

民法第1048条により、遺留分権利者が「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと」を知った時から1年以内に請求を行わなければ、時効により権利が消滅します 。

この「知った時」とは、単に贈与や遺贈の事実を知っただけでは足りず、それが遺留分を侵害していることまで認識した時点が起算点となります。


2. 【10年の除斥期間】相続開始からの絶対的期限

たとえ遺留分侵害の事実を知らなかったとしても、相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は除斥期間により消滅します 。

この除斥期間は、時効と異なり「中断」や「停止」ができないため、非常に厳格な期限です。


3. 【5年の時効】金銭支払請求権の消滅時効

遺留分侵害額請求権を行使すると、相手方に対して金銭の支払いを求める「金銭支払請求権」が発生します。この請求権は、民法第166条により、権利行使が可能であることを知った時から5年以内に請求しなければ時効により消滅します。

つまり、遺留分侵害額請求をした後も、相手が支払いに応じない場合は、裁判などの手続きを通じて時効を止める必要があります。


時効を止めるにはどうすれば?

時効の完成を防ぐためには、以下のような方法があります:

  • 配達証明付き内容証明郵便で通知書を送る
    相手方に対して、遺留分侵害額請求の意思表示を記載した通知書を送付することで、時効の中断が可能です。
  • 裁判上の請求(調停・訴訟)を行う
    裁判所を通じた請求は、時効の中断効果が確実です。
  • 債務承認を得る
    相手方が債務を認めた場合も、時効は中断されます。

特に、内容証明郵便は証拠として有効であり、私たち弁護士も第一に内容証明を送ります。


まとめ:遺留分請求は「早めの対応」がカギ

遺留分侵害額請求には、1年・10年・5年という3つの期限が存在し、それぞれ異なる性質を持っています。相続が発生したら、遺言や贈与の内容を確認し、遺留分が侵害されている可能性がある場合は、速やかに専門家に相談することが重要です。

  • 証拠の確保が重要:通知書は内容証明郵便で送付し、配達証明を付けることで、後の紛争に備えた証拠となります。
  • 早期対応が鍵:相続開始後は速やかに遺言書や贈与の内容を確認し、遺留分の侵害があるかを判断しましょう。
  • 専門家への相談:時効の起算点や請求方法は複雑なため、弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。

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