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遺産分割において、不動産の評価は極めて重要な意味を持ちます。特に調停に発展した場合、評価方法の選定が相続人間の合意形成に大きく影響します。本コラムでは、遺産分割調停における不動産評価の基本的な考え方とポイントを解説します。
不動産は相続財産の中でも高額になりやすく、現金のように簡単に分割できません。そのため、以下のような分割方法が検討されます。
このうち、特に代償分割の場合、不動産の評価額が分割の公平性を左右するため、極めて重要です。
遺産分割調停では、以下の評価方法が用いられることがあります。
調停では、家庭裁判所の調停委員が相続人の主張を聞き取り、調整を行います。評価方法について合意が得られない場合、裁判所が不動産鑑定士による鑑定を命じることもあります。
固定資産税評価額での提案にどう対応するか?
実務では、相手方が固定資産税評価額を基準に不動産価値を低く見積もり、代償金の支払いを抑えようとするケースが少なくありません。しかし、固定資産税評価額は課税のための基準であり、実際の市場価格よりも2〜3割低くなる傾向があります 。
このような場合には、以下の対応が有効です:
実勢価格は「仮に売却した場合に得られるであろう価格」であり、遺産分割の実務ではこの価格が基準とされるのが一般的です 。
したがって、固定資産税評価額での提案に対しては、市場査定額を根拠に反論することが、より公平な分割につながります。
事例:兄弟間の遺産分割調停
被相続人が残した主な財産は、郊外の一戸建て住宅(築20年)と預貯金1,000万円。相続人は兄Aと弟Bの2人。
弟Bが住宅を取得し、兄Aに代償金を支払う代償分割を希望。Bは固定資産税評価額を基準に「600万円の代償金」で提案。一方、Aは市場査定額を根拠に「900万円の代償金」を主張。
調停での展開
ポイント
この事例では、固定資産税評価額を基準にするとBが有利になり、市場価格を基準にするとAが有利になります。調停では、公平性と実態に即した評価が重視され、双方が納得できる中間値での合意が図られました
不動産の評価は、遺産分割調停において公平な分割を実現するための鍵です。特に代償分割では、評価額が直接的に金銭の授受に影響するため、市場価格に基づいた主張が重要です。具体的な査定資料を用意し、冷静かつ論理的に交渉を進めることが、納得のいく解決への第一歩となります。